姥とろ

長野県南佐久郡川上村

川上村居倉に姥とろという沼があった。そこにはひとりの姥が住んでいて、膳椀が必要な時はその前日に頼んで置けば、翌日ちゃんと用意されていた。
もし破損した時に無断で返すようなことがあれば、それからは絶対に貸さなかった。(居倉、農、吉原藤十郎76)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より

西から県道を行って、居倉に入ったあたり北側が姥ヶ瀞であるようだ。その名の遺跡が資料に見える。現在はその周辺には沼らしきものは見えないが、位置が重要だろう、今でも地区の境であり、かつてもそうだったと思われる。

しかし、姥というのはなんだろう。人なのか、そうでないのか。村落の外の人なのか、神なのか。沼の畔に一人住む姥なのか、沼の中に棲むヌシの姥なのか。あるいは、前者から後者へイメージが変じていったというような話なのかもしれない。