蛇越松とづうづの淵

原文

小海町の本間川に、五かかえもある蛇越松というのがあった。むかし本間川のある人が木を伐りに行き、この松の下で昼寝をしていると、夢に神様が現われて、「ここはなぎ押し(山くずれ)がしてあぶないから、早くどけ。」という知らせがあった。あわてて家へかえると、間もなく、そこが山くずれで埋まってしまった。それは上の方にいた大蛇が土の中からはい出したための土くずれだった。大蛇はこの松の大木を乗り越え下の方の淵へ入った。いまも淵のかたわらに立って耳をすますと、ヅウヅ・ヅウヅという蛇のなく声が聞こえる。蛇越(じゃごえ)松・づうづ淵はこれからつけられたのだといわれている。(本間川、農、篠原義勝21)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より