木谺岩・肝のせ石・血の池

原文

木谺岩(または小玉岩、児玉岩):松原湖猪名湖の東岸から五十間(約九十メートル)ばかりのところに、直径十間(約十八メートル)くらいの大岩礁があって、その上に直径一間(約二メートル)近い丸い岩が載せたようになっている。これを木谺(こだま)岩といっている。(湖の減水した時は現れて見える)この岩は畠山重忠が龍を殺した時、そのあごから出た玉がばけたのだといわれている。その岩すぐ上の水面に小さな玉がかげろうのように現われて見えたり、見えなかったりした。見えた時はころころとしていたが、どこへも転んでいかなかった。今は見えなくなってしまった。

 

肝のせ石:松原湖弁天島の祠の裏に高さ三尺(約九十センチ)余り三抱えに余るほどの大石がある。これは畠山重忠が龍の肝を取った時、その肝をのせた石だという。(松原、農、鷹野一弥39)

 

血の池:小海町松原の松原神社下社の付近に血の池がある。この池の水は、いつも赤い色をしている。これは、畠山重忠が龍を切った時に刀を洗ったので、その血のために赤くなったのだということである。(松原、農、鷹野一弥39)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より