白ぎつねと白蛇

長野県東御市

和の栗林のはずれに小さな石の祠がある。そこに昔、神様のお使いの白狐と白蛇がいた。狐は一面白い毛で覆われ、蛇は白く、体一面に疣があり、足が四本あるのが神使いの証だった。神様はどちらも大事にしていたが、当の二匹は相手が目障りで、争い事が絶えなかった。

ある日ついに白狐は、白蛇を追い払い自分だけ神様に可愛がってもらえるよう、寝ている蛇の疣を小石で皆こすり落としてしまった。目を覚ました白蛇は仰天。神使いの証である大切な疣がなくなってしまったのだ。蛇は資格を失った、と身をわきまえ、どこかに姿を隠してしまった。

ところが思い通りになった狐は、それからしたい放題で仕事もせず怠けるようになったので、神様の怒りにふれ、遠く信濃の外へ追放されてしまった。こうして石の祠には誰もいなくなってしまったが、祠の小石を借りて疣をこするときれいに取れる、と今も言い伝えられている。

『ふるさとの民話』(東部町農業協同組合)より要約

東御市というと小県郡と北佐久郡にまたがってできた市だが、和地区はもと小県郡東部町の分となる。しかしまことに変わった話があったものだ、といえる。まずは狐と蛇を使いとした神様が何であるのかが分るかどうか(現状不明)、だろうか。近隣には水篤縣神社と見えるが不詳。また社宮司も見える。