国造じいさんの釣りの話

原文

国造じいさんが、わたしに教えてくれたんだね。

その人は、魚釣りや、冬は山師をやって、木を伐ったり、流したりしておったが。

ある時、沢の奥に釣りに行ったら、風倒木にシイタケがいっぱい出とったって。

それは何十キロもあったって。

そしたらそれが、大きなヘビに見えたって。

そしたら、

〈こりゃいいことを思い付いた〉

って、膝をたたいて、

〈これは独り占めできる〉

と思って、

「あそこに、魔物がおるで行くんじゃない。食われちまう。おれも食われそうになった」

って、言った。

そしたら、村の者はぶるっちゃって(恐くなって)、あの沢はよさにゃならんって。

そこの沢は、魚もよう釣れるところで、それで自分一人で行って、魚も自由に釣って、シイタケも自由にとったって。

「ふるさとの民話」編集部『ふるさとの民話 飯田・下伊那編』
(龍共印刷株式会社)より