遠山の上村字中郷の中腹に昔ヌシの大蛇が住むといわれる大きな池があった。ある年の秋、この山の木を伐って畠を開こうと、村中総出で開墾をした。そして、小山になった小枝や落ち葉に火をつけ、その煙が風になびいて池の面を包んだ時のこと。
その煙の上に両手で顔を被った女の姿が見え、煙に巻かれて「ああ烟たい」と叫ぶのであった。やがて煙が消えてみると、百姓たちは狐につままれたように呆然となった。真っ青に見えていた大池が無くなってしまっていたのだ。
そして、不思議なことに山の頂に新しい池がひとつできた。百姓たちはヌシの仕業だといって恐れ、池の畔へ社を建てて池神社と称え、ヌシを神様に祀った。今ではそれが雨乞いの神様になっている。