不開門=不明門

原文

むかし、西内の「霊泉寺」というお寺に、中国から慶書記という絵かきがやってきました。そして、何枚もの板をつなぎ合わせて、天井に本物そっくりな龍の絵をかきました。この龍には魂がやどり、毎晩絵から抜けだしては、大雨を降らせたり、大風を吹かせたりして田畑を荒らしました。困りはてた和尚さんは龍の胸板を一枚はずし、寺の門をかたく閉ざし出られないようにしてしまいました。

ところがその後、お寺が火事になり、逃げることができない、龍の悲しそうな声が聞こえてきました。そこで胸の板をはめってやると、西の空から真っ黒な雲が現れ、龍はこの雲に飛び乗り逃げていきました。

この門は、この火事でも開けることをしませんでしたので、「不開門(あかずのもん)」と呼ばれるようになりました。開けると血の雨が降ると言われ、現在も閉められたままの姿を留めています。

 

【解説】彫刻や絵の龍が夜な夜な抜け出す話はよくあり、近くでは上水内郡小川村の高山寺にも伝えられています。

龍はいたずらをしましたが、西方からの雲に乗り逃げました。西方には極楽浄土があるとされています。

なお、この伝説には諸説があります。

丸子民話の会『丸子の民話をたずねて』より