昔、渋沢に〝たかや〟という家があった。家には大きな池があって、大蛇が棲んでいた。村に兄弟の鉄砲ぶちがおり、この大蛇を退治しようとした。まず兄が撃ったが、いくら撃っても弾は跳ね返るばかりでどうにもならない。そこで兄弟揃って撃ったが当たらず、弾が尽きそうになってしまった。
その最後の一発を、何を思ったのか弟が近くの木の切り株めがけて撃った。すると大蛇が首をねじって苦しみ始め、池の水がたちまち増えて洪水になり、あふれた水が兄弟を追いかけてきた。弟はこの水から逃げ切れず、飲まれてしまったという。
兄はどうにか生き伸びたが、それ以来村人たちは、たかやの池に石をぶち込むと雨になる、というようになったそうな。