うちの原の大蛇

原文

横沢の久保文次郎氏の裏の家の先祖様が、うちの原「昔は草がぼうぼうと生えていた」に朝草刈りに行くと、大きな蛇がどんごろ(とぐろ)をまいていた。蛇は先祖様を見ると驚いて長くなったそうだ。それで、何でも長くなった長さは五六丈もあって、太さは四斗樽位だったそうだ。そこで先祖様は腰の刀を抜いて切ったとのこと。帰って来て翌朝、飯の用意をすると言うので、いろりに鍋をかけていると、昨日の蛇が鈎様のところから下って来たので驚いて切ろうとするとスーッと消えてしまったそうだ。それからというものは、その家の者達は、えていの知れぬ病いにかかって、どんどん死ぬので家の裏へお宮を建てて祀ったという。そうしたら病気にもならなくなったということだ。

箱山貴太郎『上田市付近の伝承』
(上田小県資料刊行会)より