或人が釣に行って、疲れたので休んでいると、小さな蜘蛛が、足の親指に糸をめたからみつけていた。その人はやかましいと思って糸を側の木にからみつけるようにしたら、その木をみりみりッと根こぎにして川の中へ引きづり込んでしまったという。これは河童が蜘蛛に化けて人を引き込みに来たのだと言っている。
上田のどこの話だかも分らないが、こういうものがある。蜘蛛が糸を掛けるだけならよくある蜘蛛が淵の話だが、それが河童の化けたものだという。河童が引くのと蜘蛛が引くのは異なる話だろうと思うが、こうして一緒になることもある。
さらに佐久のほうに行くと、「化けた」というのではなく「河童に似た大蜘蛛」が出てくる話もある(「通らず」)。蜘蛛ヶ淵の蜘蛛と河童に通じるイメージを持った土地だったのかもしれない。