蛇男

山梨県西八代郡市川三郷町

山保村四尾連の大尽の娘が四尾連湖の近くへ桑つみに行き、昼寝に美男と交わる夢を見て妊娠する。母親に相談すると、母親は年寄りの話を思い出し、湖の蛇のせいかも知れぬと、たらいの中へ蛙をたくさん入れて鳴かせたので、娘の腹の中の蛇の子は蛙を食べたくて出てしまう。村人は「もういたずらをしないように」と蛇に頼み、湖畔に子安神社として祭った。安産の神である。(梗概・続甲斐 p.96)

『日本昔話通観12』より

上九一色村の伝承、となっている。四尾連湖(しびれ湖)近くに子安神社は今もある。蛙でつって蛇の子を引き出すというのは蛇聟の常套の結末のひとつだが、娘や蛇の子のほうでなく、その蛇聟を子安の神と祀った、という事例はあまりなく貴重だ。

なお、四尾連湖は四つの尾をもつ竜の湖だからそういうといい、ならばこの蛇聟はその眷属かというところだが、一方で、湖には怪牛が兄弟の侍に射とめられたという雨乞いにまつわる伝説もある。河口湖や山中湖もそうだが、竜蛇と牛の双方のヌシが語られる場所でもある。