中野に大池があって、シマ権現という白蛇がいた。庄屋がジャノヘソ(蛇の臍)という鈴のような臍のような宝を持っていて、このおかげで池に行って色々のお願いを聞いてもらうことができた。
昔はお客が来ても、自分の寝る布団くらいしかなかったから、庄屋さんにお願いして、ジャノヘソを借り池に行き、池のヌシに何を何人前貸してくらしぇ、といって膳椀や莚茣蓙なども借りることができた。
ある時、その庄屋の伜がお嫁さんをもらうことになった。さすがの庄屋もそのための膳椀蒲団など足りなかったので、ジャノヘソを使って池のヌシから借りた。しかし、その後ジャノヘソを床の間に置いておいたら、珍しがった外から来た人に盗まれてしまった。
庄屋は池の土手に行って、借りたものを置いて、ジャノヘソをとられてしまったことを泣いて詫びた。しかし、借りたものはなくなったが、いくらお願いしてもその後は池からは何も出てこなくなったという。