塩谷の池の主

原文

塩谷の村ではね。

俺(おら)が子供の時代は、村の上(かみ)に池があった。その池にセンリュウ様という主がいて、井戸を掘ってもらいたくないというセンリュウ様の願いがあって、そのかわり、村には水を不足させないということで、村の上にとてもよい清水が出た。

その水をみんな汲んで飲んでいた。最近、まあ、水道にして池をつぶした。

そのとき、センリュウ様は牛になって逃げたとか、雲に乗って夕立ちについていったとかいう話を聞いた。

〈菖蒲・星野熊蔵(M36・12・5生)〉

『山古志村史・民俗』より