尼谷池の池の主

新潟県長岡市

田や畑仕事に行っている者のために、オオヤさんが池のそばを通っておやつを持っていった。すると、そこで櫛を落としてしまったので、オオヤさんは拾ってまた頭に挿した。そうしたら、途端に櫛が大蛇に変わって、池の中にオオヤさんを引き込んで沈んでしまった。

それで村中大騒ぎになって、総出で粥を炊いて、田に堀を割って、池の水を干して娘を助け出そうとした。三日三晩総出で池を割って水を干したが、今度は大蛇が仕方ないから、夜中に牛に変わって娘を背中に乗せて、隣の小松倉という村の池へ住み着いた。

その時、一休みしたんだが、大蛇は重いので、目方でくぼんでしまった蛇窪という所がある。そういう伝説がある。

『山古志村史・民俗』より要約

原話は口述で意が通りがたいところもあるが、概ねこのような筋だろう。オオヤさん、というのが娘であり(庄屋の娘、ということらしい)、櫛が変化した大蛇に引き込まれた、という話だ。蛇が櫛に化けて人の娘を引くというのは各地に見る話だが、娘の落した櫛が蛇になった、というのは特異だろうか。