鵜ノ子の主

原文

鵜ノ子の主(1)

鵜ノ子といって、現在、新潟南警察署・廃棄物焼却場のある所には潟があった。この潟に主の大蛇がすんでいた。この大蛇がある時、会津の猪苗代湖のイモリと対決することになり、会津へ向かったが勝負に負けてしまった。その後鵜ノ子から主の大蛇はいなくなってしまった。潟にはカワウ(川鵜)の子が集まったものであった。

 

鵜ノ子の主(2)

漁師がコイ・フナ等を捕るため網引きをしたら、網の大部分は上がって来たが、中央部の、魚が最終的に集まる袋の部分は、潟の主に取られてしまった。潟の主で鵜ノ子のオジ(大蛇)権現様が、自分の住居の上で網を引いていたので、袋を切り取ってしまったのだという。次の日、夜が明けてから、みんなで舟で行ってみたら、袋の部分の網が土手の上に揚げられていた。それからというものは、漁師はそこには絶対行かなくなったという。

オジ権現様を見た者は、みんな死ぬといわれている。長潟と鵜ノ子の潟の境に土手があった。そこに堂があり、そこは鵜ノ子のオジの住居のあったところだといわれていたが、現在その堂は新潟東病院の近くに移された。

長潟の人で、豊栄市早通の親類に呼ばれて行き、酒を飲んでの帰りに、ここで、「オジ来い、オジ来い」と呼んでいるうちに死んでしまった人がいる。オジにとられたのだろうとうわさされた。昭和二十年前後のことである。

『新潟市史 資料編10 民俗 I』より