オイノクボの大蛇

原文

ここには昔その、あれですね、このちょっと人家のないとこで、人もなんにも住んでないとこで、大昔は。なんですね、大蛇が棲息しておって、それでそういう伝説がありまして。私、民話(『綾瀬の民話・伝説』綾瀬市教育委員会 昭和五十七年)でこれ書いておきますから。(どういう話ですか。)結局これ(『小園の歴史』小園村を尋ねる会 平成元年)にも書いてありますけどね、綾瀬のあれにも、民話で私、書いておきますけど。結局、人里離れたとこで、まあ、人があの、出入りしない所だから。やっぱりあの、なんですね、最近でも造成する前は蛇がたくさんいたんですよ。すごく。大蛇がおりましてね。それであの、寺尾の今、釜田ってとこありますけど、今、商店街とか工場ができまして。釜田にやっぱりあの、水が湧き出して、そのなんですね、蛇やなんか住みやすいような場所がありまして、そこへその寺尾でも昔の人がいわれたらしいですよ。小園のオイノクボから寺尾の釜田屋敷へその、ええ、大蛇が行ったり来たりしたとだから草とかね、途中のあの、草木やなんかが、このなびいていてね、途中。それちょっと、初めはなんのためにこんなになっているのかと。そうしたらオイノクボに大蛇が住んでおってね、それが行ったり来たりして、その跡がなびいていたと。ええ。それである時、このオイノクボへこの近くの、ええ、なんですね、年寄りのおじいさんがこの、草刈りに、まあその近くまで行ったんだけど、だんだんだんだんその、人が行かないからいい草があんから刈っているうちに沖の方まで行っちゃって、それでしばらくたって、草もたくさん刈れてこの辺でまあ、一服一休みということで。そのまあ、松の木のようなものが横倒しになってるから、タバコをまあ出してですね、まあ一服つけて、その松の木が横倒しになっている上へ座ったらそれが動き出しましてね。びっくり仰天しちゃってね。そうしたらそれが大蛇だったらしいんですよ。ええ。それでその人はうちに、もう草なんか、鎌、みんなひっぽり出してね、うちへ帰ってきて、それであの、ふさぎ込んで寝ちゃってね、とうとうそれがもとで、とうとうその人はあの世へ行ってしまわれたらしいんですよ。亡くなっちゃって。そういう伝説があるんですわ。ええ。ありましてね。オイノクボの大蛇ってのがね、ええ。

(蛇を見たという話ですか。)

だからその、草を刈りに行った人の話だとたまたま松の木のようなものが、そのなんですね、まさか大蛇とは知らないでね。行くたしに、木でも引っ繰り返って腐ってね、それでおるんだろうと思ってタバコを出して一服つけて、どっこいしょと、すわんべぇと思ったらそれが動きましてね。さあ、びっくら。あの、見たら大蛇と、ウワバミだね。ということで一目散にうち、その、草どこじゃない、鎌も、鎌もね。うち帰って来て布団ひっかぶって寝こんでしまって、とうとうその二、三日のうちにその人亡くなっちゃったと。死んでしまったと、いうことなんですよ。伝説があるんで。ええ。そういう話があるんですよ。(大正四年生 男)

 

大犬久保、湿地で谷戸になっておりまして、谷戸川の源流あたりなんですよ。大犬久保あたりがね。(中略)蛇の大きなのがいたと。それで夜になると原を横切って自分の恋しい蛇のもとに通ったと。そんないわれがあるんですよね。いかにも蛇がいそうな状況の所でしたね。(蛇が通って。)原に蛇が通ったあとがね、小園原にずっとついてたと。そんなふうにいわれているんですよね。(昭和四年生 男)

『綾瀬市史民俗調査報告6 小園の民俗』より