娘のところへ蛇がいい男になってかよって、その娘に蛇の子ができた。
娘さんが恋人が帰るとき、着物のつまへ糸を通しておいた。それをたどっていったら大きな木のうしろへ入っていった。そのうろへ耳をあてて聞いたら、蛇が、人間の仲間に入れたけれどこれで菖蒲湯さえ使わなければいいっていった。それで菖蒲湯へ入ってその子をおろしちゃったという。
それで五月の節句のころ菖蒲湯に入るのだという。（芹沢 布川サク 明治三十一年生）
蛇聟の筋として、「立ち聞き型」に分類される典型。市史にも引かれているが、土地の伝説というものなのかは不明。お隣の藤沢市のほうには確かに伝説として語られたらしいものがあるが。ここでは、他の蛇聟譚から参照する典型の筋として引いた。