欅に祀る源龍大善神

原文

保土ヶ谷の樹源寺の庭に、樹齢七百年といわれる大欅があって、今回市の保存木に指定せられたが、此の樹の主が当時廿一世日建上人の夢中に出現した話が残って居る。上人此の時大病で蓐に横になって居ると、夜中天女が来て申すには、我れは欅の空洞に棲む白蛇である、朝夕響く法華経読誦の声に、もはや成仏の因も芽して来た。即ち我れを源龍大善神と斎い呉れるならば、汝の病立ちどころに平癒するであろうと告げると思えば夢覚めた。そこで早速樹の洞穴に小祠を設け、祈ると忽ち快癒して了った。それからはこの大樹にはしめ縄を張りめぐらした。尚この寺には日蓮上人藤の曼陀羅というものも什宝となって居る。(市営バス保土ヶ谷終点下車凡五丁)

栗原清一『横浜の伝説と口碑・下』
(横浜郷土史研究会・昭5)より