白旗飛来

原文

神奈川区白幡町、八幡神社の山続きに、二本の巨大な松の樹があって、土地の者はこれを源氏松、平家松と呼んでいた。勿論八幡神社などの無かった昔のことである。然るに例の石橋山合戦の時、白旗一流何処よりか飛び来って、右の二本のうちの源氏松の方に引掛った。これを仰いで知った里の人々は、こういう奇瑞もあるものか、これは定めし源氏が勝って頼朝の世となる前兆であろうと評し合った。果して頼朝が天下を掌握したので、遂に此の村も旗に因んで白幡村と称えるようになったという伝えである。

八幡神社はもとより其の後に出来たもので、大昔には奥州征伐に出陣の八幡太郎義家が、来って此処に憩った旧地といわれ、即ちこの旧地に社を卜して建てたという話が残っているのである。(市電新町下車凡六丁)

栗原清一『横浜の伝説と口碑・下』
(横浜郷土史研究会・昭5)より