昔、雨間の雨武主神社の神様が、西にある網代の弁天様に用事があって出かけることになったが、神様はこれまでとは違う道を行ってみよう、と思った。いつもは秋川の北の原を通って行ったのだが、その時は峯伝いに行ってみようということになり、蛇の姿となって山を降りた。
ところが、山の上には尾根道があるものの、途中には何度も谷があり、登り降りをしなければならずひまがかかる。神様は峰を行くより裾を行ったほうがよさそうだと、山の中腹に入って行った。
蛇の姿の神様が通った道は木や草が西を向いて倒れていたという。そしてその後、その跡は、草や木が生えなくなり、地肌を見せるようになった。
雨武主(あめむしゅ)神社は秋川の南側にあり北東方を向いている。天御中主神を祀るが、妙見さんであったものかどうか、雨間(あめま)の地名由来の結びつきという気もする。いずれにせよ、昔は雨武主大明神といって祀られていた。
その神さまが蛇の姿となって西方網代の弁天山へ向かった、というお話。尾根を蛇に見立てた話のようでもあり、また草木の生えない土地の由来を蛇で語った事例のようでもある。
さらに、そちらでは蛇であるとはいわないのだが、この神さまはまた「麻で目をついた神様」であるともいうのだ。片目を怪我した、と。このあたり、近くの二宮小河神社の神さまの話ととかく重なるものがある。現状詳細は不明だけれど、興味深い神社であるといえる。