青龍にのってあらわれた妙見さま

原文

百村(もむら)の妙見尊では、毎年夏の盛りの八月七日に「蛇より行事」が行われます。青萱をより合わせて大蛇をつくり、無病息災を祈るめずらしい行事です。

江戸時代の初めの寛文二年(一六六二年)に、疫病が大流行しました。村人たちはなんとかこれを防ごうと考えました。妙見尊は天平宝字四年(七六〇年)に妙見さまが青龍にのって天下り、この地に現われたという言い伝えがのこる古い歴史を持つ神社です。

この言い伝えを思いおこした村人たちは、皆で青龍をつくってお祭りをすれば疫病が村の中に入ってくるのを防ぐことができるだろうと考えました。さっそく村のあちこちに生えている青萱を刈り取って、より合わせて大きな龍をつくりました。そして妙見尊が祀られている妙見山に村人総出で担ぎ上げました。大きな龍は妙見山のふもとから山頂の神社までのびて、さらに妙見山を七回り半もする長さであったと言われます。

村人たちの祈りによって、疫病は流行せず、またもとの静かな村にもどりました。

青萱でつくった青龍は、その形が綱でつくった大蛇に似ているところから「綱より」とか「蛇より」とか呼ばれて、現代にまで伝えられています。そして三百年以上にわたって百村地域の人々によって守り続けられ、平成四年に東京都の無形民俗文化財に指定されました。

稲城市教育委員会
『稲城の昔ばなし』より