影とりの池

東京都町田市

小山田と別所の境に長池がある。延元のころ、新田の部将として奮戦した小山田太郎高家は、摂津で武運つたなく戦死した。この報せに高家の館は悲哀に閉ざされ、若い奥方は憂愁に暮れた。そしてある日、奥方は侍女にともなわれ、そぞろ歩きに出かけたが、長池の畔に来ると、その深みに身を投じてしまった。

侍女たちも次々と後を追い入水し、それ以来池畔の松籟とともに、女のすすり泣きが聞こえるようになった。また、女性が池水に姿をうつせば、心気もうろうとなり水底にいざなわれるという。

『町田市史 下巻』より要約

多摩のほうでも小山田太郎の奥方入水の伝はいうのだが、より池のヌシ(大蛇)が影を取るのだ、というニュアンスが強い。町田の長池の話のほうは奥方と侍女の残念がそうするというだけで、それが蛇だという話にはならないようだ。