蛇こしき

東京都調布市

蛇が何匹もかたまって、とぐろを巻いているのを、「蛇こしき」とか言ってね、それを見ると、いいことがあるって、小さいときに聞いたよ。その蛇のかたまりの中に、髪にさすかんざしを入れてやると、いいことがあるんだって。
※こしき=食物をむす道具の古くからの名
(入間町 明治三〇年生 男)

蛇が何匹もいっしょになってね、きれぇーに、とぐろ巻いてる蛇こしきってのを見ると、いいことがあるって。お金が入るんだってね。金持ちになるって。(入間町 明治二六年生 女)

蛇の夢:蛇の夢ってのは、いい夢なんだってね。金持ちになるんだって聞いてるよ。だけどね、同じ蛇の夢でも、長くのびているんじゃなくって、まぁるく、とぐろを巻いているのがいいんだってさぁ。そういう夢ぇ見たら、人に話さねえで、そっとしておくんだよな。(深大寺元町 明治四三年生 男)

中島恵子
『子どものための調布むかしばなし』
(調布市立図書館)より原文

調布のほうで独特なのは、その甑となった蛇の群れの中にかんざしを入れる、というところだろうか。蛇の甑の話は元来その群れの中に宝珠などがある、それを手に入れると福を得る、という話なのだと思われるが、かんざしを入れるというのは向きが逆の発想で面白い。