氷川神社は、かつて舎人・入谷・遊馬三村の鎮守で、正治二年(一二〇〇)に、武蔵一ノ宮といわれた大宮の氷川神社を勧請祭祀した由緒ある神社です。
昔、この神社の境内に、神様のお使いといわれる白蛇が棲んでいました。たまに、その姿を、道路や田のあぜに現わしては、「あっ。白蛇さまだ」と、村民に珍しがられていました。が、そうそうはお目にかかることはできませんでした。
ところが、たまにその姿を現わした後には、きまって大雨が降ったり大風が吹いたりと、ただならないことが起こりました。
村民たちは、初めのうちはそれと気づきませんでしたが、回を重ねていくうちに、だんだんとわかってきました。
そこで、村内のどこかで白蛇の姿を見かけると「白蛇さまがお現われになったぞ」と、お互いに知らせ合い、雨戸を打ちつけたり、倒れやすい物に支柱をかったりして、天災に備えるようになりました。
おかげさまで、舎人村では天災による被害は、あったとしても比較的軽く、他村よりかなり少なかったようです。
これも、白蛇さまのお告げによるものと、白蛇に感謝し白蛇を氷川神社のお使いとして大事に扱ったということです。
今も、舎人村の白蛇として、人々の口に伝えられています。
●舎人の氷川神社を勧請した、入谷の氷川神社にも、白蛇の話が伝わっています。その内容は、舎人とほぼ同じのようです。
●遊馬(現草加市)埼玉県の〝地名を行く〟に、地名の起こりに定説はないとしながらも、明治中期の〝地誌材料稿〟によると、昔、舎人親王の別館があって、ときどき馬を放っていたところからきていると、記してあります。
●千住の虎斑(とらふ)稲荷神社には、虎の斑の入った狐が出て、天候の異変を知らせ、農民を助けた話があります。