蛇の祟りとウナギの祟り

東京都大田区

以前に大きな蛇が家に入ってきたのを殺した、それが祟ったのだ、とイチッコに言われたという。おふくろの兄貴が日清戦争に行ったのだが、熱病をもらって、無事帰国した後に発病して死んでしまった。その死の前にイチッコに見てもらったら、その昔殺した大蛇の祟りだと言われたそうだ。

その時にはいろいろなものが出た。おふくろの里は呑川の上流のほうだが、昔、毒流しをして、大鰻をとったことがあるという。どのくらい大きかったかわからないが、鰻屋へ持っていっても大きすぎて買ってもらえなかったそうだ。

そこで、その大鰻を家で食べてしまった。熱病の兄の死の前にイチッコに見てもらった時は、それも祟っていると出た。蛇のことも鰻のことも誰も言っていないのに、イチッコにはわかるのが奇態だ、とおふくろは言っていた。

大田区教育委員会
大田区の文化財 第二十二集
『口承文芸(昔話・世間話・伝説)』より要約

世間話だが、こういう蛇と鰻の祟りがあったという。呑川上流といっても、雪谷(雪ヶ谷)のほうということで、大田区の水の伝説といえばの洗足池(ここも鰻のヌシの話がある)に近いところの話だ。