以前に大きな蛇が家に入ってきたのを殺した、それが祟ったのだ、とイチッコに言われたという。おふくろの兄貴が日清戦争に行ったのだが、熱病をもらって、無事帰国した後に発病して死んでしまった。その死の前にイチッコに見てもらったら、その昔殺した大蛇の祟りだと言われたそうだ。
その時にはいろいろなものが出た。おふくろの里は呑川の上流のほうだが、昔、毒流しをして、大鰻をとったことがあるという。どのくらい大きかったかわからないが、鰻屋へ持っていっても大きすぎて買ってもらえなかったそうだ。
そこで、その大鰻を家で食べてしまった。熱病の兄の死の前にイチッコに見てもらった時は、それも祟っていると出た。蛇のことも鰻のことも誰も言っていないのに、イチッコにはわかるのが奇態だ、とおふくろは言っていた。