七面大天女様の嫉妬

原文

「鏡よ、鏡よ、この国で誰が一番美しいか知っているかい。」

西洋のある王様の美しいお后が、魔法の鏡に向って言いますと、

「亡くなった前のお后のお姫様だ。」

と鏡が答えましたので、お后は心のあまり良くない方でしたから、怒って、その姫様を猟師に殺すよう命じました……。

この話は、グリム童話『白雪姫』の一節ですが、昔はどこにも自分より美人が居るのを好まない女性がいたようです。

伝説ですが、南無谷・七面山の七面大天女様も、大昔、人里近い山の下に御座しました頃は、やはり同じ考えをお持ちで、南無谷村に美人の赤ちゃんが生まれますと、嫉妬して早死にさせ、また、村に美人の嫁さんが来ますと、たちまち後家にさせたというのです。

しかも大天女様は、本体のお姿が蛇だと言われますから、たいそう執念深く、美人たちに次ぎ次ぎ災いを振りかけたそうです。

今の大天女様は、全ての人を優しくお護りくださっておりますが、そうお成りになったのは、村人たちがある年に、大天女様の御心を変えて美人の沢山住む村にしようと、海が見えて景色の良い、今の場所にお移ししたからだそうです。

生稲謹爾『富浦の昔ばなし 第二集』
(NPO富浦エコミューゼ研究会)より