七面大天女様の嫉妬

千葉県南房総市

白雪姫では后が姫の美しさを妬むが、自分より美人がいるのを好まないのは七面大天女様も同じだった。南無谷・七面山の大天女様、昔人里近い山の下に御座しました頃は、美人の赤ちゃんが生まれれば嫉妬して早死にさせ、村に美人の嫁が来れば、たちまち後家にしてしまうという具合だった。

大天女様の本体の姿が蛇であるという事で、たいそう執念深く、美人たちに次々災いを振りかけたのだそうな。今の大天女様は全ての人々を優しく守っているが、それは村人たちが、大天女様の心を変え美人の沢山住む村にしようと、海が見えて景色の良い、今の場所に大天女様を移したからだという。

生稲謹爾『富浦の昔ばなし 第二集』
(NPO富浦エコミューゼ研究会)より要約

日蓮に七面天女の加護が訪れるのは身延でのこと。房州にも七面天女の話がいろいろ語られるが、そのほとんどはその身延での出来事を語る、というものだ。その中にあって、この南無谷の伝はなかなかに独自なものとなっている。

七面天女が蛇であるとしてこの地でも当たり前になっていたなら、それは近いものに影響を与えているはずだ。端的にいえば同地の弁天さんはそのニッチをある程度奪われているはずである。