おおさの根の主

原文

原の海の沖に「おおさ」と呼ぶ、でっかい根があります。白浜では、一番でっかい根ですよ。

その根には、むかし、何百年も生きてきた鮫がいましたが、長生きをしたため、体がこぶだらけで、牡蠣などがいっぱい付き、まるで岩のように見えました。ですから海女が潜っていっても、どこに鮫がいるのか分かりませんでした。

ところが、潜った海女が岩に触れますと、岩が、むずっと動くことがあったのです。

「ほあー、こりゃ、おおさの主だぁよ、主の鮫だぁよ」と気付き、慌てて波の上にあがり、「主や、御免してけれ、堪忍してけれ、おらは、主だって、知らなかっただよ」そう言ってまた潜っていきますと、主は細い目をあけて、「あっこ行け、あっこ行け」と教えてくれたのです。主の目の指す方に行けば、そこには必ずでっかい鮑が、いっぱいありました。

ところが、主に触れても知らん顔で謝らないと、主は鮫だから怒り、がぶりと海女を一呑みにしてしまいました。

南房総市webサイト
「市にまつわる民話」より