底見ずの池

千葉県柏市

船戸代官所に近い、うっそうとした不動明王の森に、水がれを知らない池があり、村人は底見ずの池と呼んでいた。昔、二人の村人が夜遅くに近くを通ったところ、池のほうから音がし、ぼうっと光るものが見える。

怖々と池に近づいてみると、驚いたことに、金色の鱗を輝かせた大蛇が戯れており、池の水も七色に変わりきらめいていたのであった。この話はすぐ評判になったが、大蛇は印旛沼の主が底見ずの池の主を見初めて通ってきたのだ、などと言われた。

今はもう池もないが、道路脇に、蛇が巻き付いた姿を刻んだ石が立てられている。明治のころには、目や鱗に金箔が塗られていて、これが水に映って子供心に怖かったものだ、という。

柏市webサイト「柏のむかしばなし」より要約

船戸の三峯神社鳥居の脇に今も不動堂があり、現地の解説板にも「伝説をもつ底見ずの池」があったと見える。また、不動堂の前には、話にある倶利伽羅不動の石像が道端に立っている。

すでに池はないので、これが周辺地区でどのような役割の池だったのかもよくわからず、印旛沼とのつながりを語る理由も判然とはしない。ここでは、池のヌシが逢引するなど活発になるとき、その池の水が七色に変わる、という各地に見る話の典型例として引いた。