デーダラボッチとお多福弁天

原文

むかし、途方もなくいかーいデーダラボッチという大男がおったとよ。

立ち上がると、ひざっこの下ーのほうで、雲がふわふわ流れ、毛むくじゃらなすねのあっちこっちで、鳥が巣を作ったとよ。

日本のはしっこからはしっこを、ひょいひょいひょいと、十五歩で行ぐだとよ。

デーダラボッチが、あるとき、富士山へどっこいせとけつっぺた下ろしたら、まわりの国はお日さんがさえぎられて、突然、夜んなっちまったとよ。

ほいで、大あくびさして、息をはーっとやったら、雲がふっ飛ばされて、七日七夜も雨が降り通しのところがおきたって。うそだかほんこだか、そりゃ知んねえよ。

富士山にけつっぺた下ろしとったデーダラボッチは、

「どっか遊びに行くべえ」

こう思って起ち上がっただよ。

まず片足をどすんとふみ出したところが、今の光ヶ丘、東山から松戸の根木内の辺で、ほいで、どっかへ行っちまった。

後に残った足あとの凹んだとこに、いつの間にか雨水がたまっていけす(池)になった。村の衆は、

「お多福のお面みてえだで、お多福池とすんべえ」

「んだ。ひとつ、ここに弁天様さおまつりしたらどうだんべえ」

なんてってよ、デーダラボッチの足あとは、お多福弁天の池(いけす)と呼ばれるようになっただよ。(柏市増尾)

岡崎柾男『柏・我孫子のむかし話』
(単独舎)より