えぼとり神様

原文

源心寺の左に、小さいお宮があります。

昔、水蓮の花がきれいに咲く頃になると、えぼとり神様にお参りに来たそうです。

二十一日間お参りに来て、終りの二十一日の夜、その人が夢を見たそうです。

美しい水蓮の花の中より一匹の蛇が出て、眼もあけられない程の美しい光がさしました。

その人の身体が浮きあがると、蛇になめられました。

その人は、その場にたおれ、朝まで夢の中で見たことを考えていました。

朝の食事の支度などで、多忙な時を過ごしていましたが、なんとなく鏡を見ると、顔の左のえぼと、首にあった小指の先ほどのえぼがなくなっていたということです。

そんな人が何人も、何人もいるという話が伝わって、今でも多くの人がお参りに来るということです。

千葉の成田山の神様よりもあらたかな神様だといわれ、あやめが咲く頃には茶店も出るほどになりました。

七日、十七日、二十七日にお祭りをしています。

市川民話の会『市川の伝承民話』より