きのこと大蛇

千葉県銚子市

むかし、むかし、おじいさんが山へきのこをとりに行きました。
どういうわけか、その日はとってもとっても、すぐその後からきのこが生えてきて、いくらとってもとりつくせませんでした。
おじいさんは、あんまり夢中になって、かがんでとっていたので、腰が痛くなってしまいました。
「うんしよ。」と一つ背伸びをして、ふと上を見上げますと、大きな蛇が木にまきついて、よだれをポタン、ポタンたらしながらいねむりをしていました。そのよだれが地面に落ちると、そこからきのこがニョキニョキ生えてきました。
おじいさんは、たまげて、とったきのこをほうり出して、大急ぎで逃げて帰りました。

銚子市教育委員会『銚子の民話』より

銚子のどこの話なのかなどは分からない。あまりそう伝説である点を重視するようなものでもないだろう。しかし、珍しい話ではある。実は大蛇と茸というのは時に併せ語られるもので、その点では銚子における一類話ともいえる。

しかし、その多くは、茸狩りに行ったら頭上に大蛇がいた、とか、大蛇を討伐し埋めたところ茸が生え、それを食べたら大蛇の祟りでみな中毒した、というような話だ。

それが大蛇のよだれから茸が生えてくるというのは独特だ。茸が蛇から生ずるという感覚が広くあったりでもしたのだろうか。