氷ノ雨塚

埼玉県秩父郡皆野町

大渕に氷ノ雨塚がある。『新記』の記述を見ると石を畳みあげてあったとか、古刀が出たなどといい古墳のようだが、この塚には隠れ里の伝説がある。

氷雨塚中には一坪ほどの石があって、その下に穴があり、それは龍宮に続いているといわれた。昔、村の人たちが見慣れぬ男に随って、この穴から金銀宝石で飾られた龍宮のような所へ案内された。

沢山のごちそうでもてなされ、食べると二百年の長命を保てるという人形のような品物を人数分持たされ、帰途についた。洞門を潜ったかとおもうと不思議にももう氷雨塚に出ていたそうな。

その土産物については、一人の人が十人分の土産を食べてしまい、その男だけが二千年の長生きをしたという。(高野邦雄『伝説の秩父』)

韮塚一三郎『埼玉県伝説集成・中』
(北辰図書出版)より要約

ここで気にしたいのはその名前のこと。氷雨塚・氷ノ雨塚がなんと読むのかも書いておらず、なぜそういうのかも書かれていないが、これは「火雨塚」同様の名ではないかと思うので、そこを見ておきたい。

それが秩父を見ると「氷雨」ではあるが、同様する古墳が同じ音で呼ばれ、竜宮につながっているという。三河の方で初めて「火塚」の話を知ったときには、竜蛇伝説とは関係ないだろうが気になる、といっていたが、案外そうでもないのかもしれない。