竜穏寺と竜 埼玉県入間郡越生町 昔、太田道灌がきて寺を建るために汝の竜から十年間土地を借りた。竜は証文を握って名栗の竜泉寺の池へ移ったが、十年目に美しい女になって、道灌の所にきて返却を求めた。 道灌は証文の十の字の上にノを書き入れて千年としてしまったために、女はものすごい竜となり、証文を握って三日三晩荒れに狂い、元の池に帰ったという。(『川越地方郷土研究』) 韮塚一三郎『埼玉県伝説集成・下巻』(北辰図書出版)より 同資料の「竜穏寺と竜」は、寺の縁起、この千年の証文の話、竜が名栗から来ていた小僧さんを助ける話、の三話からなっているが、その内の太田道灌の千年の証文の話を引いた。縁起のことなどは「龍穏寺の縁起」から見られたい。 こういった千年の証文の話(典型話は「だまされた大蛇」など)が何を意味して各地で語られるのかというのも難しいが、何かと竜蛇と縁が語られる太田道真・道灌親子にもやはりこの話があるのだ、ということだ。 ツイート