弁財天三体地蔵尊のはなし

原文

上尾の仲町にある一軒のお店での話です。

お店の土間の敷居の下あたりから、何か黒いものが、ずるずるっとはって来たのです。よく見ると、ナマズのような黒いものです。正体不明のものだったので、家族はどうにも気味が悪いので、占い師にお願いして見てもらったところ、

「あなたに、地蔵を救ってもらいたいので、竜神を現わしたのです。それは弁財天三体地蔵尊で、柏座地区の地中に、何年も埋もれ踏みにじられている地蔵です。」

と、占い師にいわれて、びっくりしてしまいました。あのナマズのような黒い物は、竜神で、多分、あのあとすぐに消えてしまったのでしょう。

よく朝、早く起きて、家族は草原に行き、あちこち掘り上げました。そして、父親が万能をふり下ろした所で、“カチン”と、あたる物があったので、掘り上げて見たら、お地蔵様が、うつぶせになっていたのです。

すぐに、きれいな水で洗い清めました。よく見ると、お地蔵様の右肩の上に、寛保三年と刻まれていました。

そこで、家族は新しく祠を作り、その中にお地蔵様を安置しました。

うわさを聞いた近隣の人々や、体の悪い人がおまいりに来て、おさい銭がたくさん集まりました。

家族は絵馬堂を造り、その中は絵馬であふれるほどになり、遠くの人達まで評判を聞いておまいりに来るお地蔵様になりました。ところが、ある時このお地蔵様がなくなってしまいました。あちこち探しても見つからないのであきらめていましたが、占い師にお願いしたところ

「地蔵様は、かならず三年以内にもどるでしょう。」

と、いわれました。

占い師の言葉どおり、ちょうど一年後に、もとの位置にお地蔵様がもどっていたのです。

誠に不思議なことがあるものだと、人々もびっくりしてしまいました。

今ではお堂は改修され、お地蔵様はやさしくほほえんで、合掌しておられます。

上尾の昔話と民話の本を作る教室
『上尾のむかしばなしとみんわ』(上尾市立中央公民館)より