ササイ村には、上流から大鯉が主だというベットウ渕、大鯰が主だというオフドウ渕、河童が主だというタケガ渕の三つの渕があった。この三つの渕に囲まれたシンデン山の里の大家が、瞽女さんを招いて村人に振る舞いをした。瞽女のおタケさんは大人気で、帰りは手を引いて送ろうと粉をかける男もいた。
しかし、男はつれなく袖にされ、うらんでおタケさんに危ないタケガ渕脇の崖の道を教えた。それから、おタケさんはもう見えなくなったという。その後、村に騒ぎが起こった。多くの人がタケガ渕あたりで水に引かれ、亡くなったり危ない目にあったりした。これはおタケ瞽女の恨みだ、と噂になった。
そんな中、サグチ部落の泳ぎが達者で河童の五郎の異名持つ男が、自分もおタケに魚を盗られて憤慨し、ヤッパをくわえると退治しに水に潜った。大きな白蛇と化していたおタケが現れ、死闘の末に、河童の五郎のヤッパが白蛇に突き立てられた。おタケ蛇はどこへともなく消え去ったという。
その時、おタケ蛇は五郎に、村人に悪戯したのは悪かった、でも、どうしても自分をだました男は許せないのだ、といって去った。そして、その後五郎の家にの井戸にはいつも不思議と魚が届けられたという。
また、五郎はおタケさんの心持を知り、その後村人たちと弁財天水神宮を建て祀った。これが移された際、再び凶事が里を襲ったが、元に戻すとおさまったという。この時立てた石には、おタケ瞽女の恨みに村人が怯えた有様が詳しく書いてある。