山内禁鈴・その二

原文

むかしのおはなしです。ある日のこと、喜多院のお坊さんが用事があって伊佐沼の方へでかけました。そのとき、おおぜいの村の子供達が一匹の小さな蛇をつかまえて、ひどくいじめておりました。お坊さんは「これこれいきものをいじめてはかわいそうだから、その蛇をわたしにゆずっておくれ」といって、お金をあたえ、寺につれてかえり山内にはなしてやりました。やがて年月がたち蛇は大きくなり夜な夜な付近の田畑にでて荒すようになりました。お坊さんは怒り「おまえをかわいそうだと思って長い間世話をしてきたが、田畑を荒して人さまにめいわくをかけるようではこまる、これからは用事のときはわたしが鈴を鳴らしてから出るように、それまでは仙波の池の中に入っていなさい!」と仙波の池に封じこめました。それからは山内では鈴を鳴らさないようになりました。

池原昭治『川越の伝説』
(川越市教育委員会)より