むかし、この神社の裏の池に、雌雄の竜がすんでいた。竜が田んぼに姿を現すとその年は必ず大洪水がおこり、農民は大変苦境にたたされた。そこで神官や名主たちが相談した結果、竜が池の外に出ないように毎年七月二十七日には、池の周囲に酒肴をそなえて供養した。
しかしこの方法はまったく効果がなかった。そんなある日、左甚五郎が日光参詣の途中、この地に泊まってこの竜の話を聞き知った。せわになったお礼のしるしにと、村人のために竜の彫刻をし、拝殿に取りつけてから頭、胴、尾の三か所を五寸釘で打ちつけ、封じ込めのまじないをした。以後、竜も出ないし、洪水の災難もなくなったといわれている。すっかり平和を取りもどした村は、再び静かな暮らしをつづけてきたのだという。