国昌寺の開かずの門

原文

国昌寺は曹洞宗の古刹で、二世大雲文龍和尚(元和三年寂)は能筆を以て有名で、その書は市の文化財に指定されている。この寺の山門には左甚五郎作と伝えられる龍の彫刻が揚げられていて、その扉は常に閉鎖されたままで、「開かずの門」といわれている。それには次のような伝説がある。

昔、この寺の檀家の葬列がこの門を潜ると、中の仏様がもぬけの殻になって、急に軽くなってしまう。それは甚五郎の龍が喰ってしまうからだというのである。

そんなわけで、その門はその後いかなることがあっても開かないことにして、今に及んでいるというのである。

なお、この山門の龍は、すぐ近くの見沼が大雨で氾濫すると、夜毎に抜け出て湖面をのたうちまわるので、その頭に太い釘を打ち込んでから、そのことがなくなったという。(資料提供者・浦和市大字代山一三三 厚沢八郎氏)

 

原題は「異変をおこす龍(その一)」

韮塚一三郎『埼玉県伝説集成・中巻』
(北辰図書出版)より