猫石

原文

むかし、あるところにお姫さんがいて、ある日、うちの便所に入ったんだって

そしたら、ネコが便所に入っていた。あんまりうるさいので、持っていた懐剣で、

「うるせえ」

っていって、ネコの首を刺したんだって。

ネコの首が天井へ飛んだと思ったら、ネコがヘビの首に食いついて一緒に落ちて来た。見ると、すごいヘビだったと。

それで、様子がわかった。

ヘビが便所の中でお姫様をねらっていたのを、ネコが教えてくれたのだ。お姫様はそのことがわかって、ネコに、

「かんべんしてくれ」

っていったって。

ところで、むかし農家では丸い桶の上に板をわたして便所として用をたしていた。

またぐその先のところに長い石を置く。その石のことを猫石という。これは、むかし、ネコがお姫様を助けたという故事にもとづいて、蛇除けとして置くのだという。(林・篠原きぬ)

八ツ場ダム地域文化財調査会 昔話部
『長野原町の昔ばなし』(長野原町)より