姫に恋した白蛇

群馬県甘楽郡南牧村

ぐいぐい様という石がり、河原に金を掘った大きな洞窟があった。武田信玄が掘り尽くしてしまったというが、今でも少し金が露出していたり砂金もある。ここで金が掘れなくなり、砥沢城が困ったとき、城の姫のところに美男子が現れた。

その若侍は、自分が金を掘り、砥沢城を助けてやろう、という。そして確かに金は掘れたのだけれど、姫がおにぎりをもってその人へ届けに行ったところ、真っ白な大蛇が寝ているのを見てしまった。若侍は大蛇であったのだ。

大蛇はどうしてもお姫さまをお嫁にほしいというのだけれど、姫には婚約者があって嫁に行くことができなかった。それで、姫は渕にとびこんで死んでしまった。大蛇はこれを嘆いて大きな松の木に絡まって飲まず食わずでやはり死んだという。

その松の木があったが、枯れてしまった。松の木の下には、姫の墓だというのが残っている。砥沢というところに。

たかさき民話の会
『たへいさんから聞いた 南牧谷のむかしばなし』より要約

南牧村に砥沢はあり、そこの話。金の採掘と蛇が密接に関係して語られている事例。その関係は時に深いとはいえ、蛇が自ら金を掘っているというのはなかなかに見ない話ではある。

ちなみに、出ては来るが話には関係していない冒頭の「ぐいぐい様」というのは陽根石のこと「べっちょ ぐいぐい べっちょ ぐいぐい」と唄って歩く「その石がね、もう、すごい石ですよ、その男根は」という村の禁句の石なんだそうな。