ちじん鳥の予告

群馬県多野郡上野村

鳥がね、毎年うちに巣を作れば安心だ。休むと危ねえっつんだ。燕でも何の鳥でも巣作って、それを休むとそんときは危ないね、うちは火ごとがある。現にあったんおらいうちは。この下にいたときね、豆だ稗だ粟だって干すんだ、ハゼっつうんだよ、庭さこうおっかけて、それ縛って乾かすんだよね。乾かさなきゃ、それしておいただよ。そこへちょうどその巣作るとかで、ちじんって鳥が毎年作ってんだよ、巣を作ってんだ毎年。それが一回休んだのよ。そうしたら、すぐうち焼けたことがあった。半分うち焼いた、おらんち。(上野村乙父 山中熊吉)

「三国境山麓の話」編集委員会
『傳承文藝 第十九號 三国境山麓の話』
(國學院大學民俗文学研究会)より

まったく竜蛇の話ではないが、各地でいう渡り鳥が来なくなったら禍がある、という俗信の代表例。燕にいたずらすると火事になる、などというのも、燕が巣を作らなかった年には、その家には何かがある、という話のつづまったものだろう。