シッポの切れた青大将

群馬県富岡市

曽木神社には蛇がたくさんいて、たいがい青大将だが、石垣や俵石(かつぎ石)で冬眠した。ゴケンゾクといわれていて、大事にされた。あるおかみさんが、曽木神社の縁の下の石を持ってきて養蚕室に置くとネズミ除けになると聞いて、そうした。

ところが、訳を知らない旦那さんが、邪魔な石だと外に放り出してしまった。おかみさんが話を聞かせても駄目だと聞かない。するとその後、旦那さんがカゴ台の下をのぞいた時、シッポ切れの青大将が絡まりついていた。

おかみさんが庭に放られた石を拾ってきて、きれいに土を落とし、養蚕室に置いて謝り、これからはお姿を現さないでお守りください、と言ったら、青大将は静かに姿を消した。旦那さんも青くなって驚き、以後石を大事にしたという。

『富岡市史 民俗編』より要約

富岡製糸場のある富岡の曽木には古社と伝わる曽木神社が鎮座される。富岡製糸場から歩いても30分くらいだ。上野国神名帳に見る宗伎明神とされ、現在は土地開拓の神ということか、大国主神があてられるが、本来どのような神が祀られていたのかはよく分からない。

その神池の鰻は、片目であるという。捕れば目が潰れるとされ、眼病の治癒祈願をして治れば鰻を池に奉納したという。これは星宮信仰の一端にも見えるが(そうなると蛇の養蚕守護とは近くはない)、それでもナガモノが重合してくるような神だった、ということはあるだろう。