子を守った蛇

原文

藤岡のあるお寺の大黒さん(僧侶の妻)は気立てのいいよくできた人だった。だが若くして病におかされ亡くなった。幼い息子を案じながら逝ったが、お寺には裏に大きなつるべ井戸があった。昔は井戸に子供が落ちて命を落す事故がたまにあって危険だった。そんなことの無いように、大黒さんは白蛇となって、よく井戸の回りに出てきた。蛇が出たら怖がって、我が子が井戸に近付かないだろうと、ときどき現れて子供を守っていた、という話を聞いた(藤岡市七丁目)。

土屋政江『多野・藤岡の蛇の話』より