頭の上の守り蛇

原文

Y家では、昔、主屋の下に泥を入れたら、白蛇が死んでしまった。その後、その家の娘が病気になり、父親がその家の守り神である白蛇を祀った室山神社を建立した。娘はすっかり元気になり、八十歳を過ぎるまで長生きした。死が近づいた病床で、「頭の上に蛇がいてオレを守ってくれてんだぁ。オレが死んだら奈良の猿沢の池に行って蛇を流してきてくれ」と遺言した。子どもたちはその遺言通り、猿沢の池に行って半紙で作った蛇を流した。四十九日が済んでから、子どものころ近藤沼でよく遊んだ人だったことから、子どもたちは「近藤沼に(半紙で模った蛇を)流すべ」と、猿沢の池と同じように流した。すると紙の蛇は沈むことなく泳いでいった。

『館林市史 特別編第5巻 館林の民俗世界』より