野木様と例幣使

群馬県太田市

むかし、日光の東照宮へ、毎年、京都から例幣使が奉幣にやってきた。この使いの人は、東照宮へ金の幣束を納めに行くのだという。例幣使は、道中へ泊まって行く。そうすると、街道筋のあらゆるお神は、例幣使様(金の幣束)をおがみに出るのだという。ところが、野木の明神様だけは、おがみに出なかった。そうしたら、例幣使は、
「ほかの神々はみんな出るのに、おまえだけなぜ出ない」
といったって。
そしたら、そのつぐ年には、野木様は、大きな蛇体になって、鳥居の上に、頭をまげて出て、おじぎをしていたって。
そしたら、例幣使は、
「もう出なくともいい」
っていったって(飯塚町)。

『太田市史 通史編 民俗(下巻)』より