むかし、あるとき、雨が長いあいだ降らないで、日照り続きで、このままでは、年貢米もあがらないだろうということであった。
ところが、十七歳になる道元の娘が、赤城へ行ったとき、自分が沼に入れば、さがすために、どうしても沼を掘り割るだろう。そう思って、娘は沼の中へ入って見えなくなってしまった。そして、娘は、蛇の姿になって出て来て、
「おれは、沼の主になる。」
といった。
おともの者たちは、すぐに家に帰って、娘が沼に入って死んでしまったことを、道元に告げた。
道元は、娘を探そうとして、沼を掘り割ったという。しかし、娘は見つからなかった。
小沼は粕川の水源であり、こうして、赤堀一帯のムラムラは、田植が出来たという(勢多郡新里村板橋)。
※原題は「赤堀道元の娘」