蛇になる十六の娘 群馬県前橋市 赤堀道元の娘は、赤城の神様の申し子だという。十六歳のとき、赤城へ行って、小沼のところへ行って沼へ入って蛇になって、お供の人を家へ帰したって。赤堀の人は、毎年、五月八日になると、赤飯を持って小沼へしんぜに行った。また、この辺では、十六の娘は絶対に赤城へ行くな、行くと蛇になるといった。(伝承者 六本木なつ 勢多郡宮城村柏倉) 『日本伝説大系5』(みずうみ書房)より 「赤堀道元の娘」の伝説の筋には、赤堀の娘が俵藤太と竜女との末になるから蛇になった、という話と違って、その娘は赤城明神(あるいは弁天さん)に願掛けして授かった子なので蛇になった、とする筋がある。 典型的な筋は「十六の娘」などを参照されたい。ここでは、同じ筋で、はっきりと「十六の娘は絶対に赤城へ行くな、行くと蛇になる」とその幕となる禁忌が語られている事例を引いた。 これは伊勢崎市のほうでも「この辺では、娘は赤城へ行くと大蛇になるから行くなといわれた」と語られる(同『大系』)。「赤堀家の伝説」であるにとどまらぬ、村里の娘一般の禁としてこれがあったという点に大いに注目すべきである。 ツイート