へび山 栃木県那須郡那珂川町 昔、中薬利の矢の入の奥に、山に囲まれた日当たりのよい場所があり、清水が湧き出していた。山仕事の人はその清水で喉を潤し、清水が流れては一帯の水田に水をもたらしていた。ところが、ここにいつしか大蛇が棲むようになり、村人たちは恐れて山に入れなくなってしまった。 そこで皆は大蛇を追い払おうと、弓矢に大きな矢じりをつけて遠くから大蛇を射た。しかしなかなか届かないので、さらに大きな弓を作り、何日も矢を射続けたのだそうな。それでいつしか大蛇は去り、村には平和が戻ったという。 小川町文化財資料集第9冊『おがわの昔語り』(小川町教育委員会)より要約 薬利(くずり)はもう那須官衛跡へ向かうほうで、権津川沿いにある谷戸の地。奥のほうに話しのような聖地状の湧水があったというが、今は上流部も拓けているのでよく分からない。 話の構成は、土地境を矢を射って決める神事のあったことを彷彿とさせるものとなっている。非常にわかりやすい例といえるだろう(「琵琶橋と蛇骨神社」など参照)。こういった矢はしばしば土地の領主(その祖)によって射られたとされるが、ここも矢の入の名は蛇の話とは別に与一が鳥を射たからだという話もある。 また、小川地区では竜蛇の話はあまり聞かず、むしろそれらを他の存在で置き換えたような話が目につく(「ガニックレ蟹退治」など)が、ここには珍しく蛇が登場している。そういう事例でもある。 ツイート