釜穴

原文

むかし、三輪の藤柄沢というところに水がボコボコと湧き出し、大きな釜のような形をしていることから『釜穴』と呼ばれるところがありました。

この湧き水は、あたり一帯の水田を潤していました。旅人もこの水を飲み、疲れをいやしたりしておりました。

晴天の日が続き近くの家の井戸の水が涸れても、ここだけは水が涸れることはなく、近くの人達は、この水を汲んで生活していました。

ここから流れ出る小川の水は、いつも堀いっぱいに流れていたのでいつの頃からか鯰が棲むようになり、近くの人達は鯰は水神様の使いだといって誰も取って食べることはしませんでした。

ある夏に隣村の大勢の人達が『釜穴』に鯰がいっぱいいるから鯰を取って酒の肴にしようと、鯰を取りに来ました。

ところが鯰を取ろうとした時、大きな地震が起こりましたので、隣村の人達は、これは水神様の祟りだと言って、びっくりして逃げだしてしまいました。

それ以来、『釜穴』からの湧き水は少なくなり魚などはいつの間にかいなくなってしまいました。

小川町文化財資料集第9冊
『おがわの昔語り』(小川町教育委員会)より